

2010年入社 都市計画専攻
丹羽 亮




就活当時、話題になっていた東京・大手町の連鎖型開発。規模をアピールするデベロッパーが多い中で、そこで働く人たちの目線に立ったNTT都市開発の担当者の話に強く惹かれ、入社を決めた。
最初に担当した業務は、CREを切り口とした提案営業。NTTグループで培った不動産活用のノウハウをグループ外の企業に売り込もうという狙いだったが、当時はアポイントを取ることすら難しい状況だった。
2年目になり営業対象がNTTグループに変わった。さすがに面会を断られることはなくなったが、グループ会社であっても、提案内容が優れていなければ当然商談は進まない。人的なつながりを活かして情報を集め、何度も提案を繰り返したが、思うような成果はあげられなかった。正論を語り理屈では納得させられても、担当者をその気にさせるだけの力が無かったのだ。社内では大型の複合開発が次々と動き出し、総合デベロッパーとしての機能を備えつつあった時期でもあり、同期の仲間が着実にスキルアップをしていく中、焦りを感じていた。
※Corporate Real Estate:企業が保有する不動産



4年目からはNTT都市開発ビルサービス(現在のNTTアーバンバリューサポート)で、現場の最前線である管理PM業務に就いた。当時国内最大規模の開発と言われた「グランフロント大阪」の北館を他社と共同で管理するもので、事務所には2社のスタッフが机を並べて業務にあたるとともに、施設内には各社の関係者が常駐し、施設および周辺エリアを盛り上げるためのイベント施策や施設内で起こるトラブル対応について、議論し合う日々を経験した。ここで他社トップクラスの方々から知識やノウハウを学んでやるんだと、必死で食らいついていった。
12社それぞれに文化も違えば仕事の進め方も異なる。当然求められる役割や担当しているお客様も違うので、開業当初はまさにカオスで、ルールを一つ決めるだけでも膨大な時間と手間を要した。それでも議論を重ねる中で業務の一つひとつが研ぎ澄まされ高度なマニュアルに仕上がっていく、その過程が実に楽しかった。各人、会社の代表として集ってはいるものの、それ以上にPMとしての誇りをもって業務に臨んでいるのがわかる。彼らとのやりとりのすべてが、自分の血肉となっていった。



3年間の現場業務を終え、次に与えられた環境は何とNTTコミュニケーションズへの転籍だった。最大のミッションは、2年後に竣工する大手町プレイスへの本社移転。その準備を進める傍ら、総務部の一社員として国内や海外のオフィス運営、賃料交渉まで担当させてもらった。
移転プロジェクトは、とても刺激的だった。まずは総務部で、新しいオフィスの構想を練り上げる。当時国内で「働き方改革」が叫ばれはじめ、それもしっかり織り込んだ。その案を各部署に持ち込み意見を聞いて回るのだが、当然部署ごとに求める機能や環境が違い、働き方も異なる。既存の機能を守ろうとする意志も強い。音を上げてしまいそうだったが、そこで思い出したのは、グランフロント大阪で経験した12社の意見を一つにとりまとめていく作業。あそこで学んだことを実践するだけだと腹を括り、2年掛かりで対話と調整を重ねていった。元NTT都市開発の社員であることを忘れ、NTTコミュニケーションズの社員として取り組んだ日々だったが、無事移転の日を迎えてこみ上げたのは、使う人たちの想いをカタチにできたことの喜び。それは、かつて自分の入社動機となったNTT都市開発のスタイルそのものだった。
ここで得られたもう一つの収穫は、大きな企業組織が意志を決定するプロセスに立ち会えたことだ。どんなに正しく優れた企画でも、手順を間違えると進むものも進まない。以前にCRE営業でつまづいた理由が、初めてわかった気がした。



2019年の春、アーバンソリューションズの準備会社が立ち上がったタイミングで異動。NTTグループの街づくりを中心になって進める新会社に多くの注目が集まっており、大きな変化の先端にいられることにワクワクした。
命じられた業務はまたもやCRE。しかし8年前と違うのは、グループ内でCREの活用が高く期待されていることと、NTT都市開発の目線だけではなくグループ全体を俯瞰する立場となることだった。全国に1万件以上あるグループの保有不動産の活用を推進することがミッションで、求められるのは単なる不動産価値の最大化ではなく、ICTの活用やエネルギーソリューションなども含めたNTTグループとしての価値を最大化することだ。それは、グループ全体の在り方を模索する取り組みでもあり、保有する各社の「個社最適」を超えた「全体最適」を探し出すという、大掛かりで創造的な世界に今夢中になっている。
社外の方と同じ立場で仕事をする機会が多かった私の経歴は、同期の中でも異色だと思う。開発や営業というデベロッパーの王道ではないが、さまざまな立場に立って「調整」という役割を担ってきたことに誇りを持っている。NTTアーバンソリューションズおよびNTT都市開発内でもグループ各社との連携役が務められるよう、これからも多くの人たちと語り合い、太い絆をつくっていけたらと思っている。
(取材当時)