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デベロッパーの建築担当として利用者のための街づくりを担う

デベロッパーの建築担当として利用者のための街づくりを担う

2017年入社 デザイン工学専攻
都市建築デザイン部
建築・エンジニアリング担当(取材当時)

石川 有祐美

デザインする範囲の広さと深さへの驚き

大学で建築を学んだ私が就職のときに考えたのは、ソフト面も含めて建築に関わりたいということでした。学生時代、建築デザインの細部を学ぶことはもちろん楽しかったのですが、それ以上に、どのような空間を提供すれば、そこに集う人の行動や感情、暮らしを変えることができるのか――それを考えることに魅力を感じていたからこそ、開発から運営まで、広く街づくりに関わることのできるデベロッパーで、学んだことを活かしたいと思いました。また、私は建築のデザインを考えることも好きでしたが、世の中に社会的価値のある場を創るためには、設計者が自由な発想でクリエイティビティを発揮できるような環境を整備することも大切だと感じていました。設計者の意図や思いを理解し、それをディレクションする存在がデベロッパーに必要だと考えたからこそ、設計者ではなく、街固有の歴史や文化を大切にしながら街づくりをするデベロッパーであるNTT都市開発で働きたいと思ったのです。

住民説明会は自分の言葉で

入社後は都市建築デザイン部に所属し、新たなワークスタイルに応えるシェアオフィス事業「LIFORK」や大規模再開発「大手町プレイス」、自社所有ビルの建て替えなど大小様々なプロジェクトに建築担当として携わり、新たに2つ気づいたことがありました。 1つは、業務でカバーする範囲が想像以上に広いことです。入社前は、設計者から建物の空間構成やデザインの提案を受け、それに対して判断や修整を行うようなサポート業務が多いのではないかと思っていましたが、実際は自分たちも設計者と一緒になって検討し、時には自分で手を動かしてスケッチやパースを描いたり、色や素材などを選定することまで行いました。デベロッパーがここまで設計やデザインに入り込むのかと驚くと同時に、年次や経験に関係なくさまざまな提案ができ、それがよいものであれば採用されるということに、とてもやりがいを感じました。

利用者にとって何が最善なのかという原点を忘れない

利用者にとって何が最善なのかという原点を忘れない

もう1つの気づきは、多様な視点からひとつのプロジェクトを進めていくことの難しさです。入社2年目の冬からメインとして“一人称”で担当しているプロジェクトがそれを教えてくれました。これまで私が関わってきた中では規模が大きく、自身にとって初めてのホテル案件であること、また景観規制が厳しい歴史地区にあることなどから未経験のことが多く、難易度の高いプロジェクトでした。社内では商業事業本部(当時)との密接な連携が必要になり、社外では、設計者、施工者、ホテルオペレーター、さらに行政など、関係者が非常に多く、実際に景観協議が難航した際には、デベロッパーとしての調整力が大いに問われることになりました。行政が主導する歴史ある街並み形成の取り組みの中で、設計者やデベロッパーとして自分のオリジナリティの実現が必要となります。もちろん事業性やホテルという建物の特性、運営上の制約もあります。これらすべてに目を配りながら、事業スケジュールに支障を来さないように最終案にまとめ上げなければなりません。メイン担当として任された以上、入社2年目を言い訳にするわけにはいかないと思いました。最後は、この日で景観協議がまとまらなければスケジュールがずれ込むというところまで追い込まれましたが、懸命に検討を重ね、なんとか合意を得ることができました。

関係者の協議が長引く中で、仕事への心構えとして私が意識したことがあります。それは「感謝の気持ち、謙虚な姿勢、尊敬の念を持ち、常によき市民であろう」という当社の行動指針のうちのひとつです。デベロッパーというと、発注者でありプロジェクトの中心を担う推進者であることから「上に立つ者」という意識が生まれがちですが、そのことを自戒しながら、お互いに気持ちよく働けるように、こころを配っていなければならないと思っています。 また、事業性を意識した建築デザインを検討する際に関係者間の折り合いが難しくなったとき、最後に私が拠り所とするのはその街の人々や利用者の視点です。デベロッパーは、何より利用者の代弁者でなければならないと思うのです。利用者にとって何が本当によい場であり街なのか――そこに立ち返って考えることが必要だと思っています。

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